天徳寺 境内奥にある「瓜割の滝」は、山間部から湧き出る清泉から生まれる滝で、不思議なことに一年中水温が変わらず、夏でも冷たいことで知られています。
境内の杉や檜の森に湧き出る冷たい水が滝のように流れ落ち、風で木々が揺れると水が輝き、幻想的な光景を作り出す森の中に広がっています。
空気が潤い、水のせせらぐ音が響き、木々の間から差し込む光や、苔が群生する岩は目を奪われる美しさです。
この冷たい湧き水は、流量は1日に4,500トンもあります。水温は一年中約11~12度と冷たく、特に夏場は驚くほど冷たく感じる特徴があります。
「瓜を冷やしたところ瓜が自然に割れた」という逸話から「瓜割清水」と名前がつけられました。この瓜割清水から「瓜割の滝」と呼ばれるようになりました。
その水はミネラル成分が豊富で、美味しい水として知られています。瓜割の滝から湧き出る水は、自然のフィルターとなる岩層を通り抜け、長い時間をかけて濾過された高品質なミネラル成分を含んだ水です。多くの人に愛飲されており、保存期間も優れています。
環境庁によって全国名水百選に選ばれ、「おいしさが素晴らしい名水部門」で第2位の得票数を獲得しました。また「緑とせせらぎに囲まれ活き活きとした共生田園の上中町(現 若狭町)」として水の郷百選に選ばれた名水の一つです。
駐車場横には給水所もあり、名水を味わうことができます。公園内ではペットボトルが販売されており、持ち帰ることもできます。
江戸時代の地誌書である『拾椎雑話』には、
「天徳寺の門前には岩窟から湧き出る清泉があり、これを水の森と呼んでいる。
夏の日にはこの水は氷のように冷たく、水中の小石を10個も拾えない。
俗にこの冷たい水は瓜割水と呼ばれている」
という記述があります。
この水が古くから周辺地域で冷たい水として知られていたことが分かります。湧き出し口には竹囲いとしめ縄があり、今も神聖な場所として大切に保たれています。
また、『若狭の民俗』という本によれば、この湧き水を中心に天徳寺が建立され、集落が形成されたとされています。
天徳寺は岩上神社の近くで、水の森に位置し、集落の名称も寺の名前に由来しています。この寺は集落の形成に重要な役割を果たしたと言われています。
さらに、瓜割の滝の上には四国八十八カ所石仏の霊場があります。この霊場は江戸時代に住職本如上人が空海の夢の啓示を受けて建立されました。
若狭出身の作家水上勉は、その随筆で
「石仏で名高い天徳寺。石仏は山腹に石段を登った場所にあり、佐渡島で彫られた88体の石像が安置されています。
枝が茂った杉や檜の木の間から差し込む陽光の中で、石仏たちは静かに座っています。
天徳寺は湧き水でも有名な水の森があり、石仏群の静寂の中に水の音が聞こえてきます。
若狭はやはり仏の国だと思います。」
と述べています。
滝は泰澄大師が開いた真言宗の天徳寺の境内奥に位置しており、元々は修験者の修行地であり、朝廷の雨乞いを司る祈祷所でもありました。
また、湧水の出口付近の水中にはヒルデンブリンチアリブラリスと呼ばれる特別な紅藻植物が繁殖しており、福井県の優れた自然に選定されています。福井県内で最大のベニマダラ繁殖地とされており、水中の石が赤く染まっている様子は「赤い石」として名物となっています。
若狭瓜割名水公園として整備され、庭園内にはアジサイや桜、モミジなどが1万株も植えられており、四季折々の景色を楽しむことができます。
瓜割の水
天徳寺境内奥に位置する「瓜割の滝」の岩の間から湧き出る清泉です。環境庁の「名水百選」に選ばれ、その後も国土交通省の「水の郷」認定や福井県の「ふくいのおいしい水」認定を受けています。
また、名水百選選抜総選挙では、おいしさが素晴らしい名水部門で第2位にランクされました。
若狭地方は水資源が豊富な地域であり、そのために「水の国」とも呼ばれています。陰陽師 安倍晴明が雨乞いのためにこの滝を訪れたという逸話もあります。
若狭瓜割名水公園
瓜割の滝を中心に整備された豊かな緑に囲まれた公園で、夏でも涼しく、清らかな水と木々の緑に包まれた癒しスポットです。
庭園の一角には四季折々の花々が咲き、色とりどりの花が彩りを添えます。特に6月の紫陽花は見事です。公園内には多くのアジサイが咲き誇り、紫色の紫陽花が美しく咲く様子が楽しめます。
施設内には野菜販売や食事処の「名水の里」があります。また、6月にはアジサイが見ごろとなり、毎年8月には「若狭瓜割名水まつり」が開催されます。
6月下旬頃になると、約1万株のアジサイが咲き誇り、多くの観光客が訪れます。また、花菖蒲も咲き誇る時期もあります。
名水の里
お土産・お食事処で、飲み物やお土産に瓜割の水を使用した商品や地元特産のくずまんじゅう、地元で作られた米や新鮮な野菜など、地元の特産品を販売しています。
中でもぜひ食べていただきたいのが「くずまんじゅう」です。毎年5月から10月頃まで販売されている「名水の里」の名物です。
「日本三大くず」に数えられる若狭の熊川くずと瓜割の水を使用しており、ぷるぷるの食感がやみつきになる人も多いそうです。
「くずまんじゅう」は冷蔵庫で冷やすと白く固まってしまうため、瓜割の水で冷やされています。抹茶味の緑色のくずまんじゅうもあり、ほのかな抹茶の風味が漂います。
くずの中にはツルツルと弾力があり、甘さ控えめのこしあんが入っています。口に入れるとくずがふわっと溶けていきます!
店内の水は瓜割の水です。瓜割の水はカルシウムとマグネシウムを多く含む、硬度47.0mg/Lの軟水で、ミネラル成分のバランスが良く、口当たりがやわらかい水です。
「名水の里」の前にある採水場で瓜割の水を汲むこともでき、持ち帰ることも可能で、多くの人が絶えず水を汲んでいます。
店内では採水用の容器が販売されていますが、自分で持参することもできます。
毎年8月の第1土曜日には、「若狭瓜割名水まつり」が「名水の里」一帯で開催されます。名水にちなんだイベントが盛りだくさんで、名水流しそうめんや名水野点茶会などが行われ、約1万人もの観光客で賑わいます。暑い夏の中、爽やかな涼を求めてぜひ訪れてみてください。
石仏四国八十八ヶ所
昔、弘法大師が四国八十八ヶ所を模して八十八体の石仏を刻んだと言われています。
天徳寺、馬頭観音からさらに奥に進むと、130段の階段があります。登りきると大師堂があり、そこには八十八体の石仏が並んでいます。
石仏の前の地面には四国八十八カ所の霊場から運ばれた土が入れられており、ここを踏むと同じ功徳があると言われています。
馬頭観世音
養老年間に泰澄大師が宝篋ヶ山で彫ったとされ、後に天徳寺に移されました。17年ごとに中御開帳が行われる重要な寺院です。
天徳寺
高野山真言宗の寺院で、泰澄大師によって開基されたと伝えられています。平安時代には村上天皇の勅願寺となり、その時の年号である「天徳」が名前の由来とされています。
1300年以上の歴史があり、泰澄大師が開基した由緒ある場所です。
入園自由
入園無料
瓜割の水を持ち帰る際は清掃協力費 300円
JR上中駅から徒歩15分
舞鶴若狭自動車道 若狭上中ICから車で約15分