強力粉をつなぎとした蕎麦に、大根おろしが入った出汁ツユを蕎麦にかけたり(ぶっかけ・みぞれ)、大根のしぼり汁に生醤油や出汁をくわえたツユに蕎麦をつけて食べる(しぼり・おしぼり)、大根おろしを使う蕎麦。「越前そば」、「おろしそば」とだけでも呼ばれ、大根を「薬味」ではなく「出汁」として利用していることが特徴。蕎麦店では、大根を注文を受けてからすりおろしたり、辛味を調整するために使う部位をかえるなどのこだわりがある。
江戸時代に時の領主が非常食としてそばの栽培を命じ、そばに越前産の大根をおろしたものとだしをかける食べ方が推奨されたのが起源とされる。現在では地域によって食べ方が異なり、そばに大根おろしを添えてだしをかけたり、大根おろしをまぜいれただしをそばにかけたりして食す。県内にはおろしそばを食べられるお店が多く存在。日本屈指の長寿県で食べられている健康食として、全国的に注目を集めている。
平均寿命が全国でもトップクラスの福井県で、最もよく食べられているそばは「おろしそば」です。このおろしそばは、結婚式や仏事の最後の料理や、大みそかの年越しそばとしても食べられます。また、秋から新年にかけて行われる浄土真宗各派の年中行事である報恩講では、「ほんこさん」や「おこさま」と呼ばれるもので、夜食としても提供されます。
福井県でそばが食べられる歴史は古く、戦時中の非常食として栽培されたのが始まりとされています。それから数世紀が経ち、府中の城主である本多富正がそば師を連れて赴任し、大根おろしをのせた細い麺としてのそばが広まりました。そして、昭和天皇が福井を訪れた際にこのおろしそばを召し上がり、「越前のそばは大変おいしかった」と絶賛され、それが「越前おろしそば」として全国的に知られるようになりました。
おろしそばの美味しさは、玄そばの高品質と伝統的な製粉技術に深く関係しています。在来種のそばを石臼で挽くことで、味や風味が損なわれず、そのままの美味しさが楽しめます。
福井の在来種は、おいしい蕎麦産地のランキングにおいて日本一に選ばれていて、「香りの良さ」、「味の濃さ」、「しっかりした食感」を備えた高品質の蕎麦です。
福井県では、おろしそばは報恩講の夜食や年越しそばとして欠かせません。冬でもこの冷たいそばが一般的です。また、丹南地域では、結婚式の後に父母が帰る際にもおろしそばが出され、長く幸せな結婚生活を願う意味が込められています。
食べ方は、ゆでたそばに冷たいつゆをかけ、大根おろしやカツオ節、ねぎなどをのせて食べます。福井県内では、つゆと大根おろしを別々に入れる方法や、大根おろしをつゆに混ぜる方法など、さまざまな食べ方があります。
主な伝承地域:県内全域(主に嶺北地方)
主な使用食材:生そば、大根、カツオ節、ねぎ